映画『U・ボート(Das Boot)』は、1981年(日本では1982年)に公開された潜水艦映画の最高傑作です。45年も前の映画とは到底思えない、圧倒的なクオリティと臨場感。見始めたら最後、途中で止めることができません。
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今回は、そんな今なお色褪せない名作の魅力と、実際にドイツでその圧倒的な世界観を体感できる『聖地』をご紹介します!
映画『U・ボート(Das Boot)』とは

映画史に残るドイツ映画の名作
第二次世界大戦下、大西洋へ出撃したドイツ軍潜水艦「U 96」と、その乗組員たちの過酷な航海を描いた傑作戦争映画です。極限の閉塞感と死への恐怖のなか、生き残りをかけて戦う乗組員たちの人間模様が、圧倒的なリアリズムと息の詰まるような臨場感で描かれます。
監督と脚本を手がけたのは、ドイツ出身のウォルフガング・ペーターゼンです。原作は、第二次世界大戦中に従軍記者としてU 96に乗り込んだロータル=ギュンター・ブーフハイムが、自身の体験をもとに書いた同名小説です。撮影では、潜水艦内部の狭さや息苦しさを再現するために実物大の艦内セットが作られ、カメラが狭い通路を走り抜ける独特の撮影方法が用いられました。当時としては異例の規模で製作され、公開時には西ドイツ史上最高額の製作費を投じた映画となりました。
数々の賞にノミネート
海外でも高く評価され、1983年のアカデミー賞では、監督賞、脚色賞、撮影賞、編集賞、録音賞、音響編集賞の6部門にノミネートされました。受賞には至りませんでしたが、外国語映画部門ではなく、監督や撮影、音響など主要な製作部門で候補となったことからも、その技術的な完成度の高さが分かります。
さらに、ゴールデングローブ賞では外国語映画賞にノミネートされ、ドイツ国内ではドイツ映画賞の銀賞と音響賞などを受賞しました。映画の成功をきっかけにペーターゼン監督は国際的に知られるようになり、のちに『ネバーエンディング・ストーリー』『アウトブレイク』『エアフォース・ワン』『パーフェクト ストーム』など、数多くの国際的な映画を監督しています。
あらすじと主な登場人物

この段落は、ネタバレしない程度におさえていますが、内容を少しでも先に知りたくない方は飛ばしてくださいね!
あらすじ
舞台は1941年、第二次世界大戦下のフランス・ラ・ロシェル港。大西洋を航行する連合国の輸送船を沈めるため、ドイツ海軍の潜水艦「U 96」が出撃の時を迎えていた。乗組員たちの多くは、国家のプロパガンダを信じ、栄光を夢見て志願した10代後半から20代前半の若者たち。彼らを率いるのは、戦争の行く末に冷徹な狂気と虚しさを感じ始めているベテランの「艦長」だった。
艦内は、全長わずか67メートル、幅6メートルの細長い鉄の筒。そこに五十数人の男たちがすし詰めにされる。彼らを待っていたのは、華々しい戦闘ではなく、「いつ敵に見つかるか分からない」という極限の恐怖と、閉ざされた艦内で続く過酷な日々だった。
登場人物紹介

艦長(演:ユルゲン・プロホノフ)
U 96の全乗組員を率いる艦長。作中では本名が示されず、乗組員たちには「カレウン(艦長)」または陰では「デア・アルテ(親父)」と呼ばれている人物。冷静な判断力と豊富な経験を持ち、極限状態でも乗組員の命を預かる指揮官として振る舞うが、一方で、戦争やナチスに対して冷めた視線を向ける。実在したU 96の艦長ハインリヒ・レーマン=ヴィレンブロックがモデル。
演じたユルゲン・プロホノフは、1941年ベルリン生まれのドイツ人俳優で、本作で国際的に知られるようになり、ハリウッドにも進出。『デューン/砂の惑星』『ビバリーヒルズ・コップ2』『イングリッシュ・ペイシェント』『エアフォース・ワン』など、数多くの映画に出演している。
従軍記者ヴェルナー少尉(演:ヘルベルト・グレーネマイヤー)
U 96の航海に同行する若い従軍記者。潜水艦の乗組員や戦闘の様子を取材するために乗船し、観客は主に彼の視点を通して、艦内での生活や戦争の現実を目の当たりにする。軍人ではあるものの潜水艦勤務の経験はなく、当初は乗組員たちからよそ者として距離を置かれる。原作者ロータル=ギュンター・ブーフハイム自身がモデルとなった人物。
演じたヘルベルト・グレーネマイヤーは、1956年ゲッティンゲン生まれのドイツ人俳優・歌手。本作で俳優として広く知られた後、1984年のアルバム『4630 Bochum』で歌手として大成功を収め、ドイツを代表するミュージシャンの一人となった。映画では『春の交響曲』で作曲家ロベルト・シューマンを演じている。
機関長(演:クラウス・ヴェンネマン)
U 96の機関部を統括し、艦長を技術面から支える責任者。乗組員からは「LI(Leitender Ingenieur)」と呼ばれる。経験豊富で落ち着いた人物で、艦長の右腕として潜航や浮上、機関の状態を冷静に判断する。妻が出産を控えており、航海中もその安否を気にかけている。
演じたクラウス・ヴェンネマンは、1940年ノルトライン=ヴェストファーレン州生まれのドイツ人俳優。本作で映画俳優として注目され、その後はテレビドラマ『Der Fahnder』の刑事ファーバー役などで人気を集めた。2000年、59歳で死去。
第一当直士官(演:フーベルトゥス・ベングシュ)
U 96で艦長に次ぐ立場にある若い士官。規律や身だしなみを重んじ、他の乗組員が無精ひげを伸ばすなかでも制服をきちんと着こなしている。ナチスとドイツの勝利を強く信じており、戦争に冷めた艦長や古参の乗組員たちとは対照的な人物として描かれる。
演じたフーベルトゥス・ベングシュは、1952年ベルリン生まれのドイツ人俳優。本作の第一当直士官役で広く知られ、映画やテレビ、舞台で活動したほか、ドイツ語吹替ではリチャード・ギアの声を長年担当している。
ヨハン(演:エルヴィン・レーダー)
U 96の機関を担当する熟練の機関兵。機関室にこもり、エンジンに取りつかれたように整備を続ける姿から「幽霊」と呼ばれる。無口でどこか不気味な雰囲気を持ち、他の乗組員とは少し距離のある、神経質で風変わりな人物。
演じたエルヴィン・レーダーは、1951年オーストリア生まれの俳優。本作のヨハン役で広く知られ、その後もドイツ語圏を中心に映画やテレビで活動。『シンドラーのリスト』や『アンダーワールド』などにも出演している。
制作・公開のタイムライン
YouTubeなどで検索すると、いろんな『U・ボート』関連が出てきて「どれが映画?」と混乱するかも知れません。ここで流れをまとめておきます。
テレビ用に撮影(1979年〜1981年)
ドイツのテレビ局などの資本が入り、当初はテレビ・ミニシリーズとして制作が開始されました。2年近い歳月と、当時としては異例の巨額の製作費が投じられ、膨大な量の映像が撮影されました。
先に「映画(劇場版)」として短縮公開(1981年)
完成した膨大な映像から、まずは約149分の短縮版が作られ、これが1981年に『映画』として劇場公開されました。この映画版がアメリカのアカデミー賞で6部門にノミネートされるなど世界中で大ヒットしたため、「まず映画があった」という印象を持つ人も少なくありません。
本来の姿である「テレビシリーズ」放送(1984年〜1985年)
映画の世界的ヒットから数年後、本来の目的であった約300分のドラマシリーズが、イギリスのBBCでは全6話(1984年)、ドイツでは全3話(1985年)としてようやく放送されました。
ディレクターズ・カット版(1997年)と完全版(2004年)リリース
後年になり、監督のウォルフガング・ペーターゼンは、映画版では本来の良さが十分に出ていないと考え、劇場公開版にTVシリーズの場面を大幅に組み込みました。こうして再編集された「ディレクターズ・カット版(約208分)」は、映像や音響も改良され、1997年に劇場公開されました。また、約300分のTVシリーズ版は、2004年に「完全版」としてDVD化されました。
2018年版ドラマ「Das Boot 」放送(2018年〜2023年)
邦題:Uボート ザ・シリーズ 深海の狼。オリジナル版(U 96の航海)の物語は1941年12月で幕を閉じましたが、2018年版はその9ヶ月後である1942年秋から物語が始まります。新型の潜水艦「U-612」の新たな若き乗組員たちと、ドイツ占領下のフランスで暮らす人々の物語が並行して描かれます。全4シーズン。
『U・ボート』の聖地を訪ねる!ドイツのロケ地・展示スポット
ミュンヘン:ババリア・フィルムシュタット(Bavaria Filmstadt)
おすすめ!映画の「本物の撮影セット」に入れる場所!

映画『Das Boot』の撮影で実際に使用されたUボート(U 96)の内装撮影用セットがそのまま展示されており、ガイドツアーで内部を歩くことができます。
監督のウォルフガング・ペーターゼンや俳優たちが実際に撮影を行った「本物」の空間です。細部まで作り込まれた撮影用セットの中を実際に歩くことで、映画のあの息が詰まるような閉塞感と緊張感を間近で体験できます。
📍住所:Bavariafilmplatz 7 82031 Geiselgasteig bei München
🌐公式サイト(英)
🕛営業時間:2026年の営業時間はこちらを参照
🎫入場料:コンビチケット(ガイドツアー&4Dシネマ)大人24ユーロ(2026年7月現在)
🎁スペシャルオファー:誕生日当日に証明できるIDを提示した場合、入場料無料(現地で当日券購入の場合のみ可能)
ラーボエ:U 995技術博物館(Technisches Museum U 995)

ハンブルクのさらに北、キール近郊のラーボエにある海軍記念碑「Marine-Ehrenmal」の前には、実物の潜水艦U 995が「U 995技術博物館」として展示されています。「U 995」は、世界で唯一現存するVII型Uボートです。映画『U・ボート』のU 96と同じVII型系列に属する実物の潜水艦で、内部に入って見学できます。
狭い通路や魚雷室、機関部、乗組員の寝台などを実際に間近で見ることで、映画の中で描かれたUボートの世界を、撮影セットとはまた違う迫力で体感できます。
📍住所:Strandstraße 92, 24235 Laboe
🌐公式サイト(独)
🕛営業時間:こちらを参照
🎫入場料:U 995のみ 大人8ユーロ、海軍記念碑とのコンビチケット 大人14ユーロ(2026年7月現在)
その他の内部見学できる潜水艦

映画のU 96と同じVII型ではないですが、他にもドイツ国内で潜水艦の実物を内部見学できる場所をまとめました!
ブレーマーハーフェン:Technikmuseum U-Boot Wilhelm Bauer

- 艦名:Wilhelm Bauer
- 旧艦名:U-2540
- 型:XXI型
- 時代:第二次世界大戦末期
- 内部見学可能
戦後に引き揚げられ、西ドイツ海軍で試験艦として再使用された潜水艦です。現在はブレーマーハーフェンの博物館港に展示されています。現在見学できる世界で唯一のXXI型潜水艦です。🌐公式サイト(英)
シュパイヤー:Technik Museum Speyer

- 艦名:U9
- 型:205型
- 時代:西ドイツ海軍
- 1967年就役
- 内部見学可能
全長46メートル、重量466トンの実物で、通常の見学でも艦内を通り抜けられます。特定日には、元乗組員らによる詳しいガイドツアーも行われています。🌐公式サイト(独)
ジンスハイム:Technik Museum Sinsheim

- 艦名:U17
- 型:206A級
- 時代:西ドイツ海軍・ドイツ海軍
- 2025年から内部公開
- 内部見学可能
2023~2024年にキールからシュパイヤーを経由してジンスハイムまで大輸送され、現在は現役当時の装備が残る艦内を見学できます。🌐公式サイト(独)
ヴィルヘルムスハーフェン:Deutsches Marinemuseum

- 艦名:U 10
- 型:205mod級
- 時代:西ドイツ海軍
- 内部見学可能
1998年の博物館開館時から展示されている実物艦です。艦内に入り、乗組員の寝台や食事・休憩スペース、操艦・戦闘設備などを見学できます。🌐公式サイト(独)
フェーマルン島・ブルクシュターケン:U-Boot-Museum U 11

- 艦名:U 11
- 型:205型
- 時代:西ドイツ海軍
- 2003年退役
- 内部見学可能
フェーマルン島のブルクシュターケン港に陸上展示されています。2005年から博物館として公開されており、艦内へ入れます。🌐公式サイト(独)
おわりに
名作映画『U・ボート(Das Boot)』をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?ご興味のある方は、各種配信サービスやDVDなどで探してみてください。YouTubeでトレーラーなどもアップされているので(公式以外の物が多いため、当サイトでは紹介しません)、一度検索してみてくださいね。

機会があればぜひ、実物の潜水艦も見に行ってください!
🏡ドイツの日常生活や社会のしくみ、現地での暮らしに役立つ情報は[ドイツ生活と文化カテゴリー]にまとめています。生活の知恵から文化的な習慣まで、実際に暮らす目線で分かりやすく紹介していますので、滞在中の参考にぜひご覧ください。
画像出典:
*1 Von Tore Sætre – Eigenes Werk, CC BY-SA 4.0, Link
*2 By SunOfErat – Own work, CC BY-SA 4.0, Link
*3 By Aconcagua (talk) – Own work, CC BY-SA 3.0, Link
*4 Von Wiki05 – Eigenes Werk, CC BY-SA 3.0, Link
*5 Von Sicherlich, CC BY-SA 3.0, Link
*6 Von Stefan Kühn – Eigenes Werk, CC BY-SA 3.0, Link
*7 By Amphibol – Own work, CC BY-SA 4.0, Link
*8 By Bahnfrend – Own work, CC BY-SA 4.0, Link
*9 By Hajotthu, CC BY-SA 3.0, Link


