【グリム童話翻訳】継母じゃなかった?1812年初版で読む白雪姫|原文PDF付き

白雪姫と七人の小人 ドイツ文学翻訳
白雪姫と七人の小人

この記事は、グリム兄弟『子どもと家庭の童話』1812年初版に掲載の「白雪姫」を、できるだけ原文の流れを残しながら日本語に訳していく試みです。文末には、底本として参照したWikisource公開版をダウンロードできるリンクを入れています。

まいん
まいん

後の版とは異なる、素朴さや残酷さを味わってみてくださいね。

★本ページにはプロモーションが含まれています。

白雪姫

むかしむかし、真冬のまっただ中のことでした。雪のひとひらが、羽のように空から落ちました。そこに、美しい王妃が、黒い黒檀の枠の付いた窓のところに座って、縫い物をしていました。

そして彼女が縫い物をしながら、雪のほうを見上げた時、針で指を刺してしまいました。そして三滴の血が雪の中に落ちました。その白の中の赤が、とても美しく見えたので、彼女は思いました。

「ああ、雪のように白く、血のように(唇が)赤く、そしてこの窓枠のように黒い(髪の)子どもが生まれて欲しい」

そしてまもなくして、彼女にひとりの小さな娘が生まれました。その子は雪のように白く、血のように(唇が)赤く、そして黒檀のように(髪が)黒かったので、彼女は白雪姫と名づけられました。


王妃は、国じゅうでいちばん美しく、そして自分の美しさをたいへん誇りにしていました。彼女は一つの鏡を持っていて、その前に毎朝立ち、そしてたずねました。

「鏡よ、壁にある鏡、
この国じゅうでいちばん美しい女は誰?」

すると小さな鏡はいつも言いました。

「あなたです、王妃さま、あなたがこの国でいちばん美しい女です」

そして彼女は確信するのです。世界に誰ひとり、自分より美しい者はいないのだと。


しかし白雪姫はとても美しく成長し、七歳になった頃には、王妃の美しさを越えました。そして王妃が自分の鏡にたずねたとき、

「鏡よ、壁にある鏡、
この国じゅうでいちばん美しい女は誰?」

鏡は言いました。

「王妃さま、あなたはここでいちばん美しい、
しかし白雪姫は、あなたよりなお千倍も美しい!」

王妃は鏡がそう言うのを聞いて、嫉妬で青ざめました。そしてその時から、白雪姫を憎み始めました。彼女は、白雪姫を見て、そしてこの娘のせいで自分がもはや世界でいちばん美しくないのだと思うと、心が乱れました。


彼女は嫉妬で心休まる時がありませんでした。そして彼女はひとりの猟師を呼び、彼に言いました。

「白雪姫を森の中へ、遠く離れた場所へ連れて行き、そこで刺し殺しなさい。そして証拠として、彼女の肺と肝臓を私に持ってきなさい。私はそれを塩で煮て食べるつもりです」

猟師は白雪姫を外へ連れて行きました。しかし彼が短刀を抜いて、まさに刺そうとしたとき、彼女は泣きはじめ、そして懸命に願いました。自分の命を助けてください、もう決して戻って来ません、森の中へ走り去っていくつもりです、と。猟師は彼女を哀れに思いました。なぜなら彼女はとても美しかったからです。そして考えました。

「野の獣たちがどうせすぐに彼女を食べてしまうだろう。私が彼女を殺さなくてすむのなら、その方がいい」

そしてちょうど若い猪が走って来たので、彼はそれを刺し倒し、肺と肝臓を取り出し、そしてそれらを証拠として王妃のもとへ持って行きました。王妃はそれらを塩で煮て、そして食べました。そして彼女は、自分が白雪姫の肺と肝臓を食べたのだと信じました。


その頃白雪姫は、大きな森の中で、母から離れてひとりぼっちでした。彼女は恐ろしくなって走りはじめ、走って走り続けました。とがった石の上を越え、いばらの中を抜けて、一日じゅう走りました。

太陽が沈もうとしたとき、ついに彼女は小さな家にたどり着きました。その家は七人の小人たちのものでした。しかし小人たちは家にはおらず、鉱山へ行っていました。

白雪姫は中へ入り、(そこにある物は)すべてが小さいけれど、かわいらしく清潔であると感じました。そこには小さな食卓があり、七つの小さな皿があり、そのそばには七つの小さな匙、七つの小さなナイフと小さなフォーク、七つの小さな杯がありました。そして壁ぎわには、七つの小さな寝床が並んでいて、新しく整えられていました。

白雪姫はお腹がすき、喉も渇いていました。それで、それぞれの小さな皿から少しずつ野菜とパンを食べ、それぞれの小さなグラスから一滴ずつ葡萄酒を飲みました。彼女はとても疲れていたので、寝ようと思いました。

そこで彼女は七つの小さな寝床をひとつひとつ試してみましたが、どれも彼女に合いませんでした。最後に七つ目の寝床だけが合いました。彼女はそこに横になり、そして眠り込みました。


夜になると、七人の小人たちが仕事から家に帰ってきました。そして七つの小さな灯りをつけました。すると、誰かが自分たちの家にいたことに気付きました。

一番目が言いました。

「誰が私の小さな椅子に座ったのだろう?」

二番目が言いました。

「誰が私の小さな皿から食べたのだろう?」

三番目が言いました。

「誰が私の小さなパンを取ったのだろう?」

四番目が言いました。

「誰が私の小さな野菜を食べたのだろう?」

五番目が言いました。

「誰が私の小さなフォークで刺したのだろう?」

六番目が言いました。

「誰が私の小さなナイフで切ったのだろう?」

七番目が言いました。

「誰が私の小さな杯から飲んだのだろう?」

そのあと一番目があたりを見まわして言いました。

「誰が私の小さな寝床に入ったのだろう?」

二番目が言いました。

「ああ、私のところにも誰かが寝ていたぞ」

次々と、みながそのように言いました。七番目が自分の小さな寝床を見たとき、そこに白雪姫が横たわって眠っているのを見つけました。すると小人たちはみな走って来て、驚きのあまり叫び、七つの小さな灯りを持ってきて、白雪姫を眺めました。

「ああ、神さま! ああ、神さま!」

と彼らは叫びました。

「この子はなんと美しいことか!」

彼らはたいそう喜び、また彼女を起こさず、その小さな寝床の中に寝かせておきました。しかし(寝床を取られた)七番目の小人は仲間たちのそれぞれの寝床に行って、一時間ずつ眠りました。そうして夜が過ぎました。

さて白雪姫が目を覚ますと、小人たちは、彼女が誰であり、どうして自分たちの家へ来たのかをたずねました。すると白雪姫は、自分の母が自分を殺そうとしたこと、しかし猟師が自分の命を救ってくれたこと、そして自分が一日じゅう走り、ついに彼らの小さな家へ来たことを彼らに話しました。すると小人たちは同情して言いました。

「もしおまえが私たちの家を守り、料理をし、縫い、寝床を整え、洗濯し、編みものをし、すべてをきちんと清潔に保つなら、私たちのところにいてよい。そしておまえは何不自由なく暮らせる。夕方には私たちは家に帰って来る。そのとき食事はできていなければならない。けれど昼間は私たちは鉱山にいて、金を掘っている。だからおまえはひとりだ。ただ王妃には気をつけ、そして誰も中へ入れてはいけない」


その頃王妃は、自分がまた国じゅうでもっとも美しい女になったと信じていました。朝になると鏡の前に立ち、たずねました。

「鏡よ、壁にある鏡、
この国じゅうでいちばん美しい女は誰?」

すると鏡はまた答えました。

「王妃さま、あなたはここでいちばん美しい。
しかし白雪姫は、七つの山の向こうで、
あなたよりなお千倍も美しい」

王妃はそれを聞くと驚き、そして自分が欺かれたこと、猟師が白雪姫を殺していなかったことに気付きました。七つの山の中には、七人の小人たちのほかには誰も住んでいなかったので、王妃はすぐに、白雪姫が小人たちのところに居るのだと理解しました。そして今一度、どうやって彼女を殺すことができるかを考えました。鏡が、自分が国じゅうでいちばん美しい女だと言わないかぎり、彼女の心は休まらなかったのです。


彼女にとっては、なにひとつ安全で確かであるとは思えませんでした。そして彼女は自分で年老いた小間物売りの女に変装し、顔に色を塗って、誰にも分からないようにし、外へ出て小人の家の前へ行きました。彼女は戸を叩いて叫びました。

「開けておくれ、開けておくれ。私は年老いた小間物売りで、安くて良い品を持っているよ」

白雪姫は窓からのぞいて言いました。

「何を持っているのですか?」

「紐だよ、かわいい子」

と老女は言い、紐を一本取り出しました。それは黄色と赤と青の絹で編まれていました。

「これが欲しいかい?」

「はい」

と白雪姫は言いました。そして、この善良そうな老女なら中へ入れてもよいだろう、正直者のようだから、と思いました。それで戸のかんぬきを開け、紐を買いました。

「おまえはなんてだらしない紐の締め方をしているんだろう」

と老女は言いました。

「おいで、私が一度、もっとちゃんと締め直してあげよう」

白雪姫は彼女の前に立ちました。すると老女はその紐を取り、締めて、締めつけました。あまりに強く締めたので、白雪姫は息ができなくなり、死んだように倒れました。王妃は満足して、立ち去りました。


まもなく夜になりました。七人の小人たちが家に帰ってくると、彼らの愛する白雪姫が、まるで死んだように地面に横たわっているのを見つけ、大変驚きました。

小人たちは彼女を抱き上げました。すると、彼女は紐でたいへん強く締められているのが分かりました。そこで彼らは紐をふたつに切りました。すると彼女はようやく息をし、それからまた生き返りました。

「これは王妃以外の誰でもない」

と彼らは言いました。

「あの女はおまえの命を取ろうとしたのだ。気をつけて、もうどんな人間も中へ入れてはいけない」


王妃は自分の鏡にたずねました。

「鏡よ、壁にある鏡、
この国じゅうでいちばん美しい女は誰?」

鏡は答えました。

「王妃さま、あなたはここでいちばん美しい。
しかし七人の小人たちのところの白雪姫は、
あなたより千倍も美しい」

彼女は、白雪姫がまた生き返ったことを知って、血が心臓に逆流するほど驚きました。そのあと彼女は昼も夜も、白雪姫を始末するにはどうしたらよいかと考えました。そして毒のある櫛を作り、まったく別の姿に変装し、また外へ出て行きました。


王妃は戸を叩きました。しかし白雪姫は叫びました。

「私は誰も中へ入れてはいけないのです」

そこで王妃は櫛を取り出しました。白雪姫はその櫛がきらきら光るのを見ました。そして相手が(前回の老婆とは別人の)見たことのない人だったので、戸を開け、櫛を買いました。

「おいで、私がおまえの髪を梳かしてあげよう」

と小間物売りの女は言いました。しかし櫛が髪に刺さったとたん、白雪姫は倒れて死にました。

「今度こそ、おまえは目を開けないだろう」

と王妃は言いました。そして彼女の心は軽くなり、城へ帰りました。

しかし小人たちはちょうどその時に帰ってきて、何が起こったかを見ました。そして毒の櫛を髪から引き抜きました。すると白雪姫は目を開け、また生き返りました。そして彼女は小人たちに、もう絶対誰も中へ入れないと約束しました。


王妃は自分の鏡の前に立ちました。

「鏡よ、壁にある鏡、
この国じゅうでいちばん美しい女は誰?」

鏡は答えました。

「王妃さま、あなたはここでいちばん美しい。
しかし七人の小人たちのところの白雪姫は、
あなたより千倍も美しい!」

また鏡のその言葉を聞いたとき、王妃は怒りで震え、身をふるわせました。

「それなら白雪姫は絶対死ななければならない。たとえ私の命をかけてでも!」

それから彼女は、自分の秘密の部屋へ行きました。そして誰も彼女の前へ来ることを許しませんでした。そしてそこで、彼女は毒のある林檎を作りました。外側は美しく、赤く丸みをおびていて、見たら誰でも食べたくなるものでした。


王妃は農婦に変装し、小人の家の前へ行って、戸を叩きました。白雪姫はのぞいて言いました。

「私はどんな人間も中へ入れてはいけません。小人たちが、命にかけて、それを私に禁じたのです」

「おまえたちがそうしたくないのなら」

と農婦は言いました。

「私はおまえたちを無理強いできない。でも私の林檎はもう売れるだろう。ほら、ひとつ試しにおまえにあげよう」

「いいえ、私は贈られたものも受け取ってはいけません。小人たちはそれを望んでいません」

「おまえは怖がっているのだね。では私は林檎をふたつに切って、半分を食べよう。ほら、美しい赤い半分をおまえが食べなさい」

しかし林檎はたいそう巧みに作られていて、赤い半分だけが毒をもっていました。

白雪姫は、農婦自身がそれを食べるのを見て、どうしてもそれを食べたくなりました。それでついに、その半分の林檎を窓から渡してもらい、それをかじりました。しかし一口食べるやいなや、彼女は死んで地面に倒れました。

王妃は喜び、城へ帰り、鏡にたずねました。

「鏡よ、壁にある鏡、
この国じゅうでいちばん美しい女は誰?」

すると鏡は答えました。

「あなたです、王妃さま、あなたがこの国でいちばん美しい女です」

「これで私の心は休まる」

と彼女は言いました。

「私がまた国でいちばん美しい者になった。そして白雪姫は今度こそ生き返らないだろう」


小人たちが夕方、鉱山から家へ帰って来たとき、愛する白雪姫は床の上で亡くなっていました。彼らは彼女を緩め、そして彼女の髪の中に毒のあるものが付いていないか確認しました。しかしそれは何の役にも立ちませんでした。彼らは白雪姫を再び生き返らせることはできませんでした。

彼らは白雪姫を棺台の上に置き、七人みなそのそばに座り、三日のあいだ泣きました。そのあと彼らは彼女を埋めようとしましたが、彼女の亡き骸は生き生きとしていて、まったく死者のようには見えないこと、そして頬がまだ赤く美しいことに気付きました。

そこで彼らはガラスの棺を作らせ、白雪姫を中に横たえました。人々が彼女をよく見ることができるようにです。そしてその上に金の文字で彼女の名前と、その出自も書きました。そして毎日、七人の内ひとりが家に残って棺を見守りました。

こうして白雪姫は長い、長い時を棺の中に横たわり、腐ることはありませんでした。それはなお雪のように白く、血のように赤く、そしてもしその小さな目を開けることができたなら、それらは黒檀のように黒かったでしょう。なぜなら、彼女は眠っているかのように、そこに横たわっていたからです。


あるとき、若い王子が小人の家へ来て、そこで夜を過ごそうとしました。そして彼が部屋の中に来て、白雪姫がガラスの棺の中に横たわっているのを見たとき、その上には七つの小さな灯りが輝いていました。彼はその美しさに、見ても見ても見飽きることがありませんでした。そして金の文字の銘を読み、それが王の娘であることを知りました。

そこで王子は小人たちに、死んだ白雪姫の入った棺を自分に売ってほしいと頼みました。しかし彼らは、どれほどの金を積まれてもそれを受け入れませんでした。

そこで王子は、それを自分に贈ってほしいと頼みました。彼は彼女を見ることなしにはもう生きられない、そして彼女を世の中で最も愛しいものとして、大切に敬うつもりだと告げました。

小人たちは心をゆすぶられ、彼に棺を与えました。王子は棺を自分の城へ運ばせ、自分の部屋に置かせました。彼は一日じゅう彼女のそばに座り、目をそらすこともできませんでした。そして彼が外出せねばならず、白雪姫を見ることができないときには、彼は悲しくなりました。また棺が側になければ、一口も食事をとることができませんでした。


しかし召使いたちは、絶えず棺を持ち運ばなければならなかったので怒っていました。そしてひとりがあるとき棺を開け、白雪姫を持ち上げて言いました。

「こんな死んだ娘のために、私たちは一日じゅう苦しめられるのか」

そして手で白雪姫の背中をたたきました。すると、白雪姫がかじった醜い林檎のかけらが、彼女の喉から飛び出しました。そして、白雪姫はまた息を吹き返しました。

彼女は王子のところへ行きました。王子は、自分の愛する白雪姫が生きているので、喜びのあまりどうしてよいかまったく分かりませんでした。彼らは一緒に食卓につき、喜びのうちに食事をとりました。次の日、婚礼が準備されました。そして白雪姫の邪悪な母も招かれました。


王妃はその朝、鏡の前に立って言いました。

「鏡よ、壁にある鏡、
この国じゅうでいちばん美しい女は誰?」

すると鏡は答えました。

「王妃さま、あなたはここでいちばん美しい。
しかし若い王妃は、あなたより千倍も美しい!」

彼女はそれを聞いて驚きました。そして彼女はたいそう不安で、たいそう不安で、その不安を言い表すことすらできませんでした。それでも嫉妬が彼女を駆り立て、若い王妃を婚礼で見たいと思わせました。

そして彼女が城に到着したとき、その若い王妃が白雪姫であるのを見ました。そこでは、鉄の上履きが火の中で赤く焼かれていました。王妃はそれを履かなければならず、そしてそれを履いたまま踊らなければなりませんでした。そして彼女の足は哀れなほど焼け焦げました。そして王妃は、死ぬまで踊りをやめることを許されませんでした。

<完>

底本: Brüder Grimm: „Sneewittchen (Schneeweißchen)“, in: Kinder- und Haus-Märchen, Band 1, Berlin: Realschulbuchhandlung, 1812, S. 238–250. 本文はWikisource公開版をもとにしています。

まいん
まいん

なんと、初版では王妃様は、継母ではなく白雪姫の実の母親だったんですね!娘の美貌に嫉妬して亡き者にしようとする母親も、何度騙されてもドアを開けてしまう危機感ゼロの白雪姫も、棺と暮らす王子も、現代の我々から見るとツッコミどころ満載でしたが、楽しんでいただけましたでしょうか?

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