私が小学生のころから大好きな、青池保子先生による不朽の名作漫画『エロイカより愛をこめて』。1976年の連載開始以来、長年にわたり多くのファンに愛され続けているスパイアクション・コメディの傑作です。
作品の主要人物の1人であるエーベルバッハ少佐と同じ名前のドイツの小さな町エーバーバッハ(Eberbach)は、一部の読者の間で「聖地巡礼」先として知られています。

今回は、なんと20年ぶりにエーバーバッハに行って取材してきました。子イノシシ像に再会してちょっとウルッとしちゃったんですよ。
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『エロイカより愛をこめて』とエーバーバッハ市との繋がり
『エロイカより愛をこめて』は、世界的な美術品泥棒である「怪盗エロイカ」ことグローリア伯爵と、NATO(北大西洋条約機構)の情報部将校であるエーベルバッハ少佐の2人を中心に展開される物語です。
偶然から始まった「聖地巡礼」
青池先生がキャラクターに「エーベルバッハ」と名付けたのは、できるだけ長く重々しいドイツ風の名前にしようと世界史の軍人などから着想を得たもので、実在する街の存在は知らずに命名されました。しかし、作品が大ヒットすると、ファンによって南ドイツのネッカー川沿いに同名の「エーベルバッハ(エーバーバッハ)市」が実在することが発見されます。1980年に青池先生自身が初めて同市を訪れたのをはじめ、数多くの熱狂的な日本人ファンが「聖地巡礼」としてこの小さな街を訪れる現象が巻き起こりました。
エーバーバッハ市からの「名誉賞」授与
突如として日本からの観光客が押し寄せたことに驚き、かつ喜んだ現地の観光局や市当局と、作者との間で本格的な交流がスタートします。観光業および日本との文化交流への多大な貢献が認められ、1990年にエーバーバッハ市から青池先生へ「名誉賞」が贈呈されました。その際、市のシンボル(語源であるEber=雄イノシシ、Bach=小川)にちなんだずっしりと重いイノシシの彫像も一緒に贈られています。
公式観光パンフレットへの「少佐」描き下ろし
関係は表彰だけに留まらず、市の観光局からの正式な依頼により、エーバーバッハ市の日本語版公式観光パンフレットの表紙に、青池先生がエーベルバッハ少佐を描き下ろすというコラボレーションも実現しました。

作品への逆輸入フィードバック
この街を訪れた経験は、漫画本編にも影響を与えました。エーバーバッハ市の至る所にイノシシのモチーフがあるのを見た青池先生の経験から、作中に登場するエーベルバッハ少佐の古城(実家)の調度品や家宝にも、イノシシの意匠が多数登場するようになるという逆輸入的な演出が施されています。
エーバーバッハ(Eberbach)ってどんな町?

エーバーバッハは、バーデン=ヴュルテンベルク州北部、ネッカー川沿いにある小さな町です。オーデンヴァルトの豊かな緑に囲まれ、旧市街のすぐそばを流れる川と、川辺の木々が穏やかな風景をつくっています。
町の歴史は13世紀、シュタウフェン家の王ハインリヒ(7世)が、1227年以降に城の麓で町づくりを進めたことに始まります。その後、プファルツ選帝侯領を経て、1806年にはバーデン大公国に属するようになりました。今も旧市街には、中世の市壁や4つの塔、木組みの家々が残り、路地を歩くと町の長い歴史を感じられます。
エーバーバッハ市のシンボルはイノシシです。町のいたるところにオブジェや看板、旗などが掲げられていて、市民のイノシシへの誇りと愛着が感じられます。
エーバーバッハへのアクセスと市内交通
鉄道でのアクセス
フランクフルト中央駅から、REやRBで片道約2時間。エーバーバッハ駅(Eberbach)で下車します。ハイデルベルクから近いので、日程を上手く組み合わせて2か所回るのもおすすめです。
| 乗車駅 | 下車駅 | 電車 | 所要時間 |
|---|---|---|---|
| フランクフルト中央駅 | マンハイム中央駅で乗換、エーバーバッハ駅下車 | →マンハイム:RE60、RE70 →エーバーバッハ:RE10a | 約2時間 |
| フランクフルト中央駅 | エーバーバッハ駅 | RB82(乗り換えなし、本数は少ない) | 約2時間 |
| ハイデルベルク中央駅 | エーバーバッハ駅 | S1、S2 | 約35分 |
🌐 DB(ドイツ鉄道)の公式サイトから、最新の所要時間や運賃を確認してください。

①エーバーバッハ駅到着
②Ausgang (出口)と書かれた方向に向かいます。
③エーバーバッハ駅外観
💡ここから最初の目的地「ツーリストインフォメーション」まで徒歩で約4分です。
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市内交通
コンパクトな町なので、旧市街の観光は徒歩で回れます。駅前からは市内各地区や周辺の町へ向かうバスが運行しており、周辺観光には季節運行のNaTourBusやNeO-BUSも利用できます
ドイツ全土の公共交通機関が定額で使える「Deutschlandticket(ドイチュランドチケット)」ももちろん利用可能です。こちらの記事で詳しく紹介しています。
エーバーバッハ街歩きモデルコース

とてもコンパクトな町なので、ゆっくり見ても半日程度で回ることが出来ます。
- ツーリストインフォメーションと市庁舎(Rathaus)周辺
- 火薬塔(Pulverturm)周辺
- 旧市街(Altstadt)の歴史建築
エーバーバッハ市内の見どころ
ツーリストインフォメーションと市庁舎(Rathaus)周辺
駅に着いたら先ずはツーリストインフォメーションに向かいます。エーベルバッハ少佐の描かれた日本語版公式観光パンフレットは棚に出されていませんが、受付で「日本語版ありますか?」と尋ねたら奥から出してきてくれました(2026年10月)。


観光案内の日本語版が欲しい場合は、Haben Sie den Prospekt auf Japanisch?(ハーベン・ズィー・デン・プロスペクト・アウフ・ヤパーニッシュ?)と尋ねてみるといいですよ。
市庁舎は、ツーリストインフォメーションと同じ建物です。市役所なので開庁時間中は市民(ではないけど)が入っても問題ないと判断、入って右手の方にお手洗いがあるので使わせてもらいました。

建物の前にはWappenbrunnen(紋章の噴水)があります。エーバーバッハ市と、市に編入された地区の8つのブロンズ製の紋章があしらわれています。

🔶ツーリストインフォメーション
📍住所:Leopoldspl. 1, 69412 Eberbach
🌐エーバーバッハ市公式サイト(独)
🕛営業時間:11月~4月 月火木 10:00-12:00 & 14:00-17:00/ 水 10:00-12:00 & 14:00-18:00/金 10:00-12:00 5月~10月 上記に加え、金 14:00-17:00/土 10:00-12:00
火薬塔(Pulverturm)周辺
市庁舎エリアから火薬塔までは徒歩で3~4分の距離です。先ずはThonon-PlatzにあるKurpfalzbrunnen(クーアプファルツブルンネン/プファルツ選帝侯領の噴水)と、その後ろのオレンジ色の建物、Thalheimsches Haus(タールハイムシェス・ハウス)が目に入ってきます。Thalheimsches Hausは、15世紀初頭から記録に残るエーバーバッハ最古の石造建築で、現在は自然公園の情報センターとして使われています。噴水上部に立っているのは、プファルツ選帝侯領を象徴するライオンです。

Kurpfalzbrunnenのすぐ向こうには、Frischlingsbrunnen(フリッシュリングスブルネン/子イノシシの噴水)があります。噴水といっても水は出ていませんが、とにかくかわいい子イノシシたちに思わずほっこりしてしまいます。20年ぶりの再会に思わずウルッとなりました。

その子イノシシたちの背後にそびえ立つのが、Pulverturm(プルファートゥルム/火薬塔)です。旧市街に現存する4基の防御塔の一つで、13世紀に築かれた市壁の北西角に、15世紀に増築されました。塔には、地元の時計職人が1766年に製作した塔時計が残されています。

Thalheimsches HausとPulverturmの間にある門を入ると、中庭にFischerbrunnen(フィッシャーブルネン/漁師の噴水)があります。1982年に完成した噴水で、かつてエーバーバッハで盛んだったネッカー川の漁業を記念して制作されました。噴水には、ネッカー川から引き揚げられた砂岩と、かつて鎖船航行に使われた鎖も組み込まれています。漁師たちが引き上げる漁網から水が流れ落ちる造形が見事で、一見の価値ありです。

中庭から出てネッカー川方向に向かうと、道路沿いの大きめのイノシシのオブジェが目に入ります。まったくどれだけイノシシが好きなんだ、と思わずにいられません(笑)。

道路を渡ってネッカー川沿いに行くと、GoogleマップでHafengebiet Eberbachと表示されている場所があります。そこからネッカー川が180度見渡せるのでおすすめです。動画でご紹介します。
🔶火薬塔(Pulverturm)
📍住所:Kellereistraße 30, 69412 Eberbach
🌐エーバーバッハ市公式サイト(独)
⚠️現在は内部見学はできなくなっています。
旧市街(Altstadt)の歴史建築
次に、Pulverturmから徒歩で4~5分のAlter Markt(アルター・マルクト/旧市場広場)に移動します。広場に面してHotel Karpfen(ホテル・カルプフェン)とMuseum der Stadt Eberbach(エーバーバッハ市立博物館)が建っています。

Hotel Karpfenは、1804年建築の歴史あるホテルです。目を引く正面の壁画は、1934年に画家リヒャルト・ヘンベルガーが手がけたもの。色の異なる漆喰を削って描く「スグラフィート」という技法で、エーバーバッハの歴史が表現されています。

市立博物館は、旧市庁舎を利用した博物館です。町の歴史とともに、林業やネッカー川の漁業・造船・舟運、砂岩の採掘など、地域の暮らしを支えてきた産業を紹介しています。

🔶エーバーバッハ市立博物館
📍住所:Alter Markt 1, 69412 Eberbach
🌐公式サイト(独)
🕛開館時間:水・土・日・祝 14:00-17:00
🎫チケット:無料(寄付歓迎)
Alter Marktから、Pfarrgasse(プファルガッセ)を通って、Bettendorfsches Tor(ベッテンドルフ門)をくぐり、Pfarrhof(プファルホーフ)に向かいます(徒歩約2分)。Pfarrhofは、歴史ある木組みの家々が残る一角です。周辺には15~16世紀に建てられたベッテンドルフ家とヴェッカー家の建物があり、中世の町並みを感じられます。ベッテンドルフ家の建物が立つ場所には、町の成立当初、王や王の役人の拠点がありました。

Bettendorfsches TorからRosenturm(ローゼントゥルム)へは徒歩で2~3分です。Rosenturmは、13世紀に市壁とともに築かれた、エーバーバッハに残る4つの塔のうち最も古い塔です。名前は、近くにあった馬の水飲み場にちなむ旧称「Rossenbrunner Turm」に由来し、薔薇とは関係ありませんが、その名にちなんだのか壁面につるバラが仕立てられています

🔶ローゼントゥルム
📍住所:Weidenstraße, 69412 Eberbach
エーバーバッハのおすすめカフェ
Café Viktoria(カフェ・ヴィクトリア)

Café Viktoriaは、1886年創業の老舗カフェ兼コンディトライです。看板商品は、1962年に考案されたViktoria-von-Eberbach-Torte(ヴィクトリア・フォン・エーバーバッハ・トルテ)。チョコレート風味のスポンジに、オレンジやクリーム、バーデン産ワインを合わせた爽やかな味わいのトルテです。
1963年にはそのトルテが当時の英国女王エリザベス2世へ送られ、後にバッキンガム宮殿から礼状が届いています。



名物トルテとコーヒーを頼んで、合計約10ユーロくらいでした。とっても美味しかったです😋
🔶カフェ・ヴィクトリア
📍住所:Friedrichstraße 5-9, 69412 Eberbach
🌐公式サイト(独)
🕛営業時間:毎日 8:00-18:00
管理人「まいん」の愛用品
可愛い見た目の薄型・軽量モバイルバッテリーです。海外旅行にも最適!
現地ではなかなか見つけにくい、軽くて優秀な晴雨兼用傘です。旅行用に1本あると重宝します。
おわりに
私が前回エーバーバッハを訪れたのは2006年3月のことで、あれからもう20年も経ったなんて信じられない思いです。その日は日曜日でお店もツーリストインフォメーションも閉まっていたので、子イノシシたちを見たあと、さっさとハイデルベルクに移動したのでした。
今回、取材も兼ねてゆっくりとエーバーバッハを訪れることができ、そして何よりエーベルバッハ少佐の描かれた日本語版の観光パンフレットを入手できたのは本当にラッキーでした!

20年越しの希望が叶いました。このパンフレットは永久保存版として家宝にします♡
🏰ドイツ各地の観光スポットや街歩きコースは、他の記事でも紹介しています。人気都市から歴史ある町まで、現地在住の筆者がまとめた旅行ガイドを掲載しています。ぜひ[ドイツ観光案内カテゴリー]もあわせてご覧ください。



