『若きウェルテルの悩み』は、ドイツの文豪ゲーテが1774年に発表した書簡体小説です。18世紀ヨーロッパの若者たちを熱狂させ、「ウェルテル熱」と呼ばれる社会現象まで生んだ、ドイツ文学を代表する恋愛小説。あのナポレオンをして、「私はこの作品を7回読んだ」といわしめました。
この連載では本作の1774年初版を、日本語で自然に読める新釈として一通ずつご紹介します。本記事の現代語訳は、当サイトが独自に作成したものです。無断転載はご遠慮ください。

ウェルテルからあなたへ、5月13日の手紙が届きました。
★本ページにはプロモーションが含まれています。
1771年5月13日
僕の本を送ったほうがいいかと尋ねているのかい?友よ、どうか、それだけは勘弁してくれ。僕はもうこれ以上、導かれたり、励まされたり、情熱をかき立てられたりしたくない。この心は、放っておいても十分にたぎっているのだから。僕に必要なのは子守歌だ。そしてそれを、僕はホメロスの中に余すところなく見いだした。
この荒れ狂う血を、僕はこれまでどれほど何度も鎮めてきたことだろう。これほど起伏が激しく、落ち着きのない心など、君もほかに見たことがないだろう。
友よ、君にはあえて言うまでもないことだ。悲しみに沈んだかと思えば度を越した振る舞いに走り、甘美な憂愁に浸ったかと思えば身を滅ぼすような情熱に駆られる――そんな僕を、君は幾度となく見守り、その重荷に耐えてきたのだから。
僕は自分の心を、病気の子供のように扱っている。その気まぐれを、何もかも許してやっているのだ。このことは誰にも言わないでくれ。知れば、僕を非難する人もいるだろうから。
※本連載は、ゲーテ『Die Leiden des jungen Werthers』1774年初版の電子テキストを底本としています。原文はBibliotheca Augustanaで閲覧できます。
Amazon Audible でオーディオブックを楽しむ
『若きウェルテルの悩み』のオーディオブックは、アマゾンAudibleのプレミアムプランに入会すると聴き放題対象です。こちらのリンクから 申し込むと、プレミアムプランが最初の30日間無料なので、ぜひお試しください。無料期間中にいつでも退会できます。竹山 道雄(訳)、山口晶士(朗読)。

書簡に込められたウェルテルの感情を「朗読」で味わってみたい方におすすめです。
📚 ドイツ文学の名作紹介や作品解説、原文翻訳シリーズをまとめています。物語や詩を通してドイツ語圏の文学世界にふれられる【ドイツ文学と翻訳カテゴリー】もあわせてチェックしてみてください。



