【若きウェルテルの悩み】03/80|1771年5月12日の手紙

『若きウェルテルの悩み』1771年5月12日の手紙 ドイツ文学と翻訳

『若きウェルテルの悩み』は、ドイツの文豪ゲーテが1774年に発表した書簡体小説です。18世紀ヨーロッパの若者たちを熱狂させ、「ウェルテル熱」と呼ばれる社会現象まで生んだ、ドイツ文学を代表する恋愛小説。あのナポレオンをして、「私はこの作品を7回読んだ」といわしめました。

この連載では本作の1774年初版を、日本語で自然に読める新釈として一通ずつご紹介します。本記事の現代語訳は、当サイトが独自に作成したものです。無断転載はご遠慮ください。

まいん
まいん

5月12日、またウェルテルからあなたに手紙が届きました。

【若きウェルテルの悩み】02/80|1771年5月10日の手紙
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【若きウェルテルの悩み】01/80|1771年5月4日の手紙
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1771年5月12日

僕には分からない。この辺りを人を惑わせる精霊たちが漂っているのか、それとも、僕の心に宿る温かくも神々しい想像力が、周囲のすべてをこれほど楽園のように見せているのか。

町のすぐ外にはひとつの泉がある。僕は、メリュジーヌとその姉妹たちのように、その泉にすっかり魅入られている。小さな丘を下ると、丸天井の空間があり、二十段ほどの階段が下へと続いている。その先では、澄みきった水が大理石の岩から湧き出している。

泉のまわりを縁取る小さな壁、その場所をぐるりと覆う高い木々、辺りに漂う涼しさ。そのすべてに、どこか人を引きつけ、どこかぞくりとさせるものがある。僕は毎日、そこで一時間を過ごしている。

町から少女たちがやって来て、水を汲んでいく。それはもっとも素朴で、もっとも欠かせない仕事であり、かつては王の娘たちでさえ自ら行っていたことだ。

そこで座っていると、旧約聖書の族長たちが生きた時代の光景が、僕のまわりに生き生きと蘇ってくる。古の族長たちは皆、泉のほとりで女性と出会い、求婚した。そして、泉や水源のまわりには、人に恵みを与える精霊たちが漂っている。

ああ、この思いを分かち合えない者は、厳しい夏の日の旅のあと、泉の涼しさに癒やされたことが一度もないに違いない。

※本連載は、ゲーテ『Die Leiden des jungen Werthers』1774年初版の電子テキストを底本としています。原文はBibliotheca Augustanaで閲覧できます。

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まいん
まいん

書簡に込められたウェルテルの感情を「朗読」で味わってみたい方におすすめです。

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