『もじゃもじゃペーター』って聞いたことがありますか?1845年代に発表された、ドイツの子供向けの絵本です。でも実は3歳から6歳児向けという当時の表題とはうらはらに、現代の大人でも「え?これやばくない?」と思うちょっとブラックな内容なのです。
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今回は、私の住むフランクフルトにゆかりの深い、その『もじゃもじゃペーター』をご紹介します。
もじゃもじゃペーター( Der Struwwelpeter)ってどんな絵本?

フランクフルトの医者が息子のために作った絵本
1844年のクリスマス前、フランクフルトの精神科医ハインリヒ・ホフマンは、3歳の息子カールに贈る絵本を探しに出かけました。しかし、子どもに与えたいと思える本が見つかりません。
そこでホフマンは、絵本の代わりに白紙のノートを一冊買って帰り、自分で物語を作り、挿絵を描いて息子にプレゼントしました。この手作りの一冊が、のちの『もじゃもじゃペーター』です。
家族や知人の間で評判となり、友人だった出版者に勧められて、翌1845年に本として出版されました。初版の題名は『3~6歳の子どものための愉快な物語とおかしな絵』で、『もじゃもじゃペーター』という現在の題名が使われるようになったのは、1847年の第4版からです。
世界的なベストセラーに
息子のために作られた一冊のノートは、やがてドイツを代表する絵本のひとつになりました。『もじゃもじゃペーター』は出版後も版を重ね、1876年には早くも第100版に到達しました。現在までに540版以上が刊行され、100を超える言語や方言に翻訳されたといわれています。
英語版をはじめ、フランス語、イタリア語、スペイン語、ロシア語など、世界各地で翻訳版が作られました。物語をもじったパロディーや政治風刺、舞台、映画なども数多く生まれ、初版の刊行から180年以上たった現在も読み継がれています。
大人もドキッとするその内容
短い詩と挿絵で構成された『もじゃもじゃペーター』は全10話。3歳から6歳の子ども向けの絵本として出版されました。「言うことを聞かない子はこんな目にあうよ!」という躾のために書かれたのだと思うのですが、10話の内の数話は「え、これいいの?」と思うようなブラックなものも。

その怖い内容を一覧にまとめてみました!3歳の子がこれを読み聞かされたら夜泣きするんじゃないでしょうか??
| 話数 | タイトル | 内容 |
|---|---|---|
| 1 |
もじゃもじゃペーター Der Struwwelpeter |
ペーターは両手の爪をほぼ一年間切らせず、髪もとかさせません。そんな姿を見て、みんなが「なんてひどい、もじゃもじゃペーター!」と叫びます。 |
| 2 |
意地悪なフリードリヒのお話 Die Geschichte vom bösen Friederich |
フリードリヒはハエの羽をむしり、椅子をたたき壊し、鳥を殺し、猫たちをひどい目にあわせ、グレートヒェンを鞭で打ちます。さらに犬を鞭打って蹴り続けたため、脚を血が出るほど深くかまれ、ベッドで苦い薬を飲まされます。その間、犬は彼のケーキやレバーソーセージを食べ、ワインを飲み、持ち帰った鞭を見張ります。 |
| 3 |
マッチのとても悲しいお話 Die gar traurige Geschichte mit dem Feuerzeug |
両親の留守中、パウリーネは猫たちの忠告を聞かずにマッチへ火をつけます。炎が服、手、髪、そして全身へ燃え移り、最後には灰の山と二足の靴だけが残ります。猫たちは座り込んで泣き続けます。 |
| 4 |
黒い少年たちのお話 Die Geschichte von den schwarzen Buben |
ルートヴィヒ、カスパー、ヴィルヘルムの三人は、通りかかった黒い少年を見て笑います。ニコラウスにやめるよう注意されても笑い続けたため、三人とも頭までインク壺へ沈められ、からかった少年よりも真っ黒になります。 |
| 5 |
猟師のお話 Die Geschichte vom wilden Jäger |
ウサギを撃とうとしていた猟師が草の上で眠ると、ウサギは猟銃と眼鏡を持ち去り、今度は猟師へ銃を向けます。逃げた猟師は井戸へ飛び込み、発射された弾は猟師の妻のコーヒーカップを真っ二つにします。こぼれた熱いコーヒーは、草むらにいた子ウサギの鼻へかかります。 |
| 6 |
指しゃぶりのコンラートのお話 Die Geschichte vom Daumenlutscher |
母親はコンラートに、指しゃぶりをすると仕立屋が来て親指を切ると警告します。母親が出かけると、コンラートはすぐに親指を口へ入れます。すると大きなハサミを持った仕立屋が現れ、両手の親指を切り落とします。 |
| 7 |
スープを飲まないカスパーのお話 Die Geschichte vom Suppen-Kaspar |
健康で丸々と太っていたカスパーは、突然スープを食べないと言い始めます。翌日には痩せ、三日目には弱り、四日目には糸のように細くなり、五日目に死んでしまいます。 |
| 8 |
落ち着きのないフィリップのお話 Die Geschichte vom Zappel-Philipp |
フィリップは父親の注意を聞かず、食卓の椅子を激しく揺らし続けます。椅子が後ろへ倒れ、フィリップがつかんだテーブルクロスとともに、皿、瓶、パン、スープなどがすべて床へ落ちます。両親はひどく怒り、食べるものもなくなります。 |
| 9 |
上ばかり見るハンスのお話 Die Geschichte vom Hanns Guck-in-die-Luft |
ハンスは歩くとき、足元を見ずに空ばかり眺めています。犬とぶつかって一緒に転び、その後も川辺で空を見続けたため、頭から川へ落ちます。二人の男に棒で助けられますが、全身ずぶ濡れになり、魚たちに笑われ、学校鞄は遠くへ流されます。 |
| 10 |
空飛ぶローベルトのお話 Die Geschichte vom fliegenden Robert |
嵐の日には子どもたちが家にいるなか、ローベルトは傘を持って外へ出ます。強風が傘をつかみ、ローベルトは空高く飛ばされます。帽子も飛び去り、傘とローベルトがどこへ運ばれたのかは、誰にも分かりません。 |
本編紹介
ここでは、既にパブリックドメインとなっている原作から、第1話と第2話を画像と日本語訳付きでご紹介します。
第一話 もじゃもじゃペーター

まあ、ごらんなさい。ここに立っているのは、
うわっ、もじゃもじゃペーターです!
両手の爪は、
もうほとんど一年も切らせません。
髪も、くしを入れさせません。
うわっ、みんなが叫びます。
なんてひどい、もじゃもじゃペーター!
第二話 意地悪なフリードリヒのお話

フリードリヒ、フリードリヒ、
それはたいへんな乱暴者!
家の中ではハエを捕まえ、
その羽をむしり取ります。
椅子を壊し、鳥を殺し、
猫たちもひどい目にあいました。
どれほど悪い子だったかというと、
グレートヒェンにまで鞭を振るったのです!

泉のそばに、大きな犬がいて、
そこで口をつけて水を飲んでいました。
そこへ鞭を手に、
意地悪なフリードリヒが忍び寄ってきました。
そして犬を打ちました。
犬はひどく鳴きましたが、
フリードリヒは何度も蹴り、
さらに打ち続けました。
すると犬は、フリードリヒの脚にかみつき、
血が出るほど深く牙を立てました。
意地悪なフリードリヒは、
大声で叫び、ひどく泣きました。
けれど犬は家へ走って帰り、
鞭を口にくわえていきました。

フリードリヒはベッドに入れられ、
脚のひどい痛みに苦しみました。
お医者さまがそばに座り、
苦い薬を飲ませます。
そのころ犬は、フリードリヒの小さな食卓に座り、
大きなケーキを食べていました。
おいしいレバーソーセージも食べ、
喉が渇くとワインを飲みました。
持ち帰った鞭もそばに置き、
大切そうに、しっかり見張っていました。
フランクフルトにある「もじゃもじゃペーター博物館」
フランクフルトの新旧市街「Neue Altstadt」には、『もじゃもじゃペーター』と作者ハインリヒ・ホフマンを紹介するStruwwelpeter Museumがあります。館内には、ホフマンの肖像画、手紙、スケッチ、初版本などが展示され、さらに、珍しい各国語版やパロディー、映画、音楽、芸術作品などが紹介されています。
子ども向けの展示も多く、物語を体験できる遊びのコーナー、デジタルゲーム、衣装を着て物語を演じられる劇場スペース、工作やお絵描きができるテーブルがあり、親子で楽しめる体験型の博物館となっています。
📍住所:Hinter dem Lämmchen 2–4, 60311 Frankfurt am Main
🌐公式サイト(英)
🕛開館時間:火~日曜 11:00~18:00、 月 休館
🎫入場料:大人8ユーロ、割引4ユーロ、6歳以上の子ども4ユーロ、6歳未満は無料 (2026年7月現在)
ℹ️日本語を含む無料音声ガイドあり
おすすめの書籍
世界各地で翻訳された『もじゃもじゃペーター』は、もちろん日本語版も出版されています。Amazonや楽天で購入できます。
おわりに
一話一話はとても短いですが、独特の可愛らしい挿絵と、容赦のない展開との落差が、この作品ならではの不思議な魅力なのだと思います。今回は二話のみ翻訳しましたが、機会があれば残りの八話も記事にしたいと思います。

フランクフルトを訪れることがあったら、是非「もじゃもじゃペーター博物館」を訪れてみてくださいね!
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