『若きウェルテルの悩み』は、ドイツの文豪ゲーテが1774年に発表した書簡体小説です。18世紀ヨーロッパの若者たちを熱狂させ、「ウェルテル熱」と呼ばれる社会現象まで生んだ、ドイツ文学を代表する恋愛小説。あのナポレオンをして、「私はこの作品を7回読んだ」といわしめました。
この連載では本作の1774年初版を、日本語で自然に読める新釈として一通ずつご紹介します。本記事の現代語訳は、当サイトが独自に作成したものです。無断転載はご遠慮ください。

今日もウェルテルから便りが届きました。5月15日の手紙です。
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1771年5月15日
この土地の庶民たちは、もう僕に親しみを持ってくれている。とりわけ子供たちはそうだ。だが、そこで僕は、ある悲しい事実に気づいた。初めのころ、僕が彼らの中に入って気さくにあれこれ話しかけると、からかわれていると勘違いし、ひどく無愛想な態度を取る者もいたのだ。
それでも、僕はめげなかった。ただ、以前から感じていたことを、改めて強く思い知らされた。ある程度の地位にある人間は、庶民に近づけば何かを失うとでも思っているのか、いつも冷ややかに距離を置こうとする。また、軽薄な者や悪意のある冗談を好む者たちは、わざわざ庶民のところまで身をかがめてみせながら、かえって自分たちの傲慢さを、貧しい人々にいっそう痛切に感じさせるのだ。
人間がみな平等ではなく、平等にはなりえないことは、僕にもよく分かっている。だが、尊敬を得るためには、いわゆる「下々の者」と距離を置かなければならないと考える人間は、敗北を恐れて敵から身を隠す臆病者と同じくらい、非難されてしかるべきだと思う。
先日、泉へ行くと、若い女中がいた。彼女は水瓶をいちばん下の段に置き、それを頭に載せるのを手伝ってくれる仲間の娘が来ないかと、あたりを見回していた。僕は階段を下り、彼女に声をかけた。
「お手伝いしましょうか、お嬢さん?」
彼女は顔を真っ赤にした。
「とんでもございません、旦那様!」
「遠慮はいりませんよ」
彼女が頭の上の輪形の当て物を整えると、僕は水瓶を持ち上げて載せてやった。彼女は礼を言い、階段を上っていった。
※本連載は、ゲーテ『Die Leiden des jungen Werthers』1774年初版の電子テキストを底本としています。原文はBibliotheca Augustanaで閲覧できます。
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書簡に込められたウェルテルの感情を「朗読」で味わってみたい方におすすめです。
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