『ニーベルンゲンの歌』は、中世ドイツ文学を代表する英雄叙事詩です。その成り立ちは、【ニーベルング伝説】を紐解く|日本で混同されやすい派生作品とその原点で詳しくお話しました。

今回は、ついに英雄ジークフリートが戦場へ向かいます。その圧倒的な活躍を描く第四の冒険を、現代語訳でご紹介します。
『ニーベルンゲンの歌』は、中世ドイツ文学を代表する英雄叙事詩です。全39の「冒険」から成り、王女クリームヒルト、英雄ジークフリート、ブリュンヒルト、ハーゲンらの運命が、壮大な物語として語られます。
この連載では、Karl Bartsch校訂『Das Nibelungenlied』の電子テキストを底本に、各冒険を現代語で読みやすく訳しています。本記事の現代語訳は、当サイトによる新釈です。無断転載はご遠慮ください。
第四の冒険の登場人物と舞台
- ジークフリート:ネーデルラントからヴォルムスへ来た若き英雄。
- グンター:ブルグントの王。ヴォルムスに宮廷を置く。
- ゲルノート:ブルグントの王。兄グンター、弟ギーゼルヘルとともに国を治める。
- ハーゲン:ブルグント王家に仕える重臣。戦に通じた勇士。
- ダンクヴァルト:ハーゲンの弟。ブルグントに仕える勇士。
- フォルカー:ブルグントに仕える勇士。楽人としても知られる。
- リウデガスト:デンマーク王。ブルグントへ戦いを挑む。
- リウデガー:ザクセンの君主。リウデガストの弟。
- クリームヒルト:ブルグント王家の王女。グンターたち三王の妹。
- ヴォルムス:現在のドイツ、ラインラント=プファルツ州にあるライン川沿いの町(Worms)。物語ではブルグント王国の王都。
- デンマーク:現在のデンマークにあたる地域。物語ではリウデガストが治める国。
- ザクセン:現在のニーダーザクセン州を中心とする、ドイツ北部一帯にあたる地域。物語ではリウデガーが治める国。
第四の冒険『ジークフリート、出陣』
やがてグンター王の国へ、遠い地から不穏な知らせが届いた。ブルグントに恨みを抱く二人の王が、使者を送ってきたのである。
一人はザクセンの有力な君主リウデガー、もう一人はデンマーク王リウデガストであった。二人は多くの勇士を味方につけ、ブルグントへ攻め込もうとしていた。
使者たちがヴォルムスへ到着すると、何者なのか、何のために来たのかを問われ、ただちにグンター王のもとへ通された。王は彼らを丁重に迎えた。
「よく来られた。そなたたちを誰が遣わしたのか、私はまだ聞いていない。ここへ来たわけを話してもらいたい」
使者たちは、グンターが怒り出すのではないかと恐れながら答えた。
「王よ、私どもが携えてきた知らせを申し上げても、命を奪わぬとお約束ください。私どもを遣わしたのは、リウデガスト王とリウデガー王です。お二人は、軍勢を率いてこの国へ攻め込もうとしておられます。
お二人は、あなたに大きな恨みを抱いています。多くの勇士たちとともにライン川沿いのヴォルムスへ進軍するつもりです。十二週間以内には、この国へ到着するでしょう。
頼りになる味方がいるのなら、今こそ呼び集めるべきです。城と国を守るため、ただちに兵を整えなければなりません。さもなければ、多くの兜や盾が彼らの剣によって打ち砕かれることになるでしょう。
もし戦いを避け、和議を結びたいとお考えなら、その旨をお伝えください。そうすれば、大軍がこの国へ迫り、多くの立派な騎士が命を落とすこともないでしょう」
グンターは答えた。
「しばらく待ってもらいたい。よく考えたうえで、私の意向を伝えよう。信頼できる者たちを呼び、この知らせを打ち明けねばならない」
使者たちを退出させた後も、グンターは苦悩を胸の内に抱えていた。そしてハーゲンをはじめとする重臣たちを呼び、ゲルノートにも急いで宮廷へ来るよう使いを出した。勇士たちが集まると、グンターは告げた。
「強大な軍勢が、この国へ攻め込もうとしている。これは我らにとって、まことに憂うべきことだ」
だが、勇敢なゲルノートは少しもひるまなかった。
「剣をもって迎え撃ちましょう。戦場で死ぬのは、死ぬべき運命にある者だけです。敵を恐れて名誉を失うことなどできません。この国へ来るというのなら、存分に迎えてやりましょう」
ハーゲンは、慎重な考えを口にした。
「それほど容易なことではありません。リウデガストとリウデガーは、強大な力を持つ王たちです。しかも、残された日数はわずかです。これほど短い間に、十分な味方を呼び集めることはできません」
そして、こう付け加えた。
「ジークフリートに、このことを話してみてはいかがでしょう」
グンターは使者たちを町に滞在させた。敵から来た者たちではあったが、滞在中は何不自由なく過ごせるよう、手厚くもてなした。その間に王は、誰が自分たちとともに戦ってくれるのかを確かめようとした。
しかし、どれほど勇士たちと相談しても、グンターの心から憂いは消えなかった。やがて、沈み込んでいる王の姿をジークフリートが目にした。何が起きたのか知らない彼は、グンターに尋ねた。
「不思議でなりません。これまで私たちと楽しく過ごしておられたあなたが、なぜ急に、そのように心を曇らせているのですか」
グンターは答えた。
「胸の内に抱える苦しみを、誰にでも話すわけにはいかない。心から信頼する友にだけ、打ち明けるべきことなのだ」
それを聞くと、ジークフリートの顔色が変わった。
「私はこれまで、あなたの頼みを拒んだことはありません。どのような苦しみであろうと、力を尽くして取り除きましょう。信頼できる友を求めておられるなら、私がその一人となります。あなたの名誉を守り、最後まで務めを果たしてみせます」
「ありがとう、ジークフリート。その言葉を聞けただけでも心強い。たとえ今すぐ、そなたの力を借りることがなかったとしても、その厚意を私は決して忘れない。私が生きているかぎり、いつか必ず報いよう」
そしてグンターは、敵の使者がもたらした知らせを語った。
「リウデガストとリウデガーが、大軍を率いてこの国へ攻め込もうとしている。この地が他国の軍勢に攻められるのは、これまでになかったことだ」
するとジークフリートは言った。
「そのようなことを、深刻にお考えになる必要はありません。どうか心を静め、私にお任せください。あなたの名誉と国を守るため、私を戦わせてください。ほかの勇士たちにも、出陣の支度をお命じください。たとえ敵に三万の兵がいようとも、こちらに千人の勇士がいれば、私が迎え撃ってみせます」
グンターは喜んだ。
「それほどの働きをしてくれるなら、私は生涯そなたに恩を感じるだろう」
「それでは、この国から千人の勇士を選んでください。私が故郷から連れてきたのは、わずか十二人です。彼らとともに、あなたの国のために戦いましょう。ジークフリートの腕は、これからも変わらぬ忠誠をもってあなたに仕えます。
ハーゲンとオルトヴィーン、ダンクヴァルトとジンドルトにも加わってもらいましょう。勇敢なフォルカーにも来てもらいたい。軍旗を任せるなら、彼ほどふさわしい者はいません。
敵の使者たちは、国へ帰してください。我らが間もなく彼らの前に姿を現すと伝えるのです。そうすれば、この国の城々は危険にさらされずに済みます」
グンターは、親族や家臣たちを呼び集めるよう命じた。
やがて敵の使者たちが宮廷へ呼び戻され、帰国してよいと告げられた。彼らは大いに喜んだ。グンターは多くの贈り物を与え、道中を守る護衛までつけた。
「リウデガストとリウデガーに伝えよ。軍勢を率いて来る必要はない。国にとどまっていた方がよいとな。それでもなお我が国へ攻め込むというのなら、味方が私を見捨てぬかぎり、彼らは厳しい戦いを知ることになるだろう」
使者たちの前には、さらに豪華な贈り物が運ばれてきた。彼らはそれを断ることができず、丁重に別れを告げてヴォルムスを後にした。
使者たちがデンマークへ戻り、グンターの返答を伝えると、リウデガストは激しく腹を立てた。彼らは、ブルグントには多くの勇士がおり、その中にはネーデルラントから来たジークフリートという英雄もいたと報告した。
それを聞いたリウデガストの心には、不安が広がった。デンマークの者たちは、これまで以上に多くの味方を集めようと急いだ。リウデガストは二万の勇士をそろえ、ザクセンのリウデガーも各地へ使いを送り、兵を呼び集めた。こうして二人のもとには、四万を超える大軍が集結した。
一方、ブルグントでも、グンターの親族や、兄弟たちに仕える勇士、ハーゲンの配下の者たちが出陣の支度を進めていた。だが、この戦いによって、多くの勇士が命を失うことになる。
軍勢がヴォルムスを発つ日、勇敢なフォルカーが軍旗を掲げ、ハーゲンが全軍の指揮を執った。ジンドルトとフーノルト、ハーゲンの弟ダンクヴァルト、そしてオルトヴィーンも一行に加わった。
ジークフリートは、グンターに言った。
「王よ、あなたはこの国にお残りください。勇士たちは私に従うと申しております。どうかご婦人方のそばにいて、心安らかにお過ごしください。あなたの名誉も国も、必ず私が守ってみせます。
ライン川のヴォルムスへ攻め込もうとした者たちを、ここまで近づけはしません。こちらから敵の国深くへ進み、彼らの傲慢な心を恐れに変えてやりましょう」
ブルグントの軍勢はライン川を渡り、ヘッセンを通ってザクセンへ向かった。敵地へ入ると、物資を奪い、火を放ちながら進んだ。そのため、リウデガストとリウデガーは、たちまち戦の恐ろしさを知ることになった。
やがて、従者たちを伴う一行は国境へ達した。そこでジークフリートは尋ねた。
「我らがここを離れている間、誰にこの一行を守らせるべきだろう」
勇士たちは答えた。
「若い従者たちを守る役目は、ダンクヴァルトに任せましょう。彼は機敏で勇敢な男です。オルトヴィーンとともに後方を守らせれば、リウデガーの軍に襲われても、被害を少なくできるでしょう」
「それでは私は一人で先へ進み、敵がどこにいるのか探ってこよう」
ジークフリートはすぐに武具を身につけた。出発する前に軍勢をハーゲンとゲルノートに託すと、ただ一人でザクセンの地を進んでいった。
やがて彼は、野原を埋め尽くすほどの大軍を発見した。その数は四万を超え、こちらの兵力をはるかに上回っていた。だが、ジークフリートは恐れるどころか、戦いを前にして心を奮い立たせた。
敵軍からも、一人の勇士が斥候として出ていた。二人は遠くから互いの姿を認め、敵意をむき出しにして近づいていった。相手は、デンマーク王リウデガストだった。手には黄金に輝く盾を持っていた。
互いを敵と見定めた二人は、馬の脇腹に拍車を当てた。槍を構え、力のかぎり相手の盾へ突進する。激しい槍の応酬によって、リウデガスト王は大きな不安に襲われた。
槍を交えた後、二人は手綱を引いて馬を巧みに操り、再び向き合った。今度は剣を抜き、激しく打ち合った。
ジークフリートが剣を振るうたび、あたりには轟音が響いた。リウデガストの兜からは、燃え上がる炎のように赤い火花が飛び散った。だが、リウデガストも負けてはいない。彼もまた、ジークフリートに何度も激しい一撃を浴びせた。
リウデガストの配下の者たち三十人が、遠くから戦いを見守っていた。しかし彼らが助けに駆けつけるより先に、ジークフリートが勝利を収めた。
ジークフリートは、王の立派な鎧を貫いて三か所に深い傷を負わせた。剣の刃が通った傷口からは血が流れ出し、リウデガストはもはや敗北を認めるしかなかった。
彼は命を助けてほしいと懇願し、自分の国を差し出すとまで申し出た。そして、自分こそがデンマーク王リウデガストであると名乗った。
そこへ、戦いを見ていた三十人の勇士が駆けつけてきた。
ジークフリートが捕らえた王を連れ去ろうとすると、三十人は一斉に襲いかかった。だが彼は、激しい剣さばきで大切な捕虜を守りながら、敵を次々と打ち倒していった。
三十人のうち、二十九人がジークフリートの剣に倒れた。彼が生かしておいたのは、ただ一人だけだった。その男は全速力で陣営へ戻り、何が起きたのかを仲間たちに知らせた。血に染まった赤い兜を見れば、彼の言葉が真実であることは明らかだった。
王が捕らえられたと知ったデンマークの者たちは、激しく嘆いた。知らせを受けた弟のリウデガーは、怒りのあまり我を忘れた。
ジークフリートは、捕らえたリウデガストをブルグント軍のもとへ連れていき、ハーゲンに預けた。捕虜がデンマーク王本人だと知った勇士たちは驚いたが、心を痛めたりはしなかった。
ジークフリートは、ブルグントの軍旗を掲げるよう命じた。
「さあ、さらに大きな働きをしよう。私が今日を生き延びるなら、日が暮れるまでに、まだ多くのことを成し遂げてみせる。ザクセンでは、この戦いによって多くの女たちが悲しむことになるだろう。
ライン川から来た勇士たちよ、私の後に続け。リウデガーの軍勢がいるところまで案内しよう。そこで、優れた勇士たちの手によって兜が打ち砕かれるのを見ることになる。だが我らもまた、無事に帰るまでには、戦の苦しみを知るだろう」
ゲルノートとその配下の者たちは、急いで馬に乗った。勇敢なフォルカーが軍旗を掲げ、全軍の先頭へ進み出た。
ブルグント軍の兵力は、わずか千人であった。それに、ジークフリートとともにネーデルラントから来た十二人の勇士が加わった。彼らが馬を走らせると、道にはもうもうと砂ぼこりが舞い上がり、陽光を受けた多くの盾が輝いた。
ザクセンの軍勢も、剣を携えて待ち構えていた。彼らは自分たちの城と国を、侵入者から守ろうとしていた。
両軍が激突すると、たちまち激しい戦いとなった。ジークフリートも、ネーデルラントから連れてきた勇士たちとともに敵陣へ斬り込んでいく。その日の戦場では、数えきれないほど多くの者の手が血に染まった。
ジンドルトとフーノルト、そしてゲルノートは、敵の勇士たちを次々と打ち倒した。彼らの強さを思い知らされる前に、多くの者が命を落とした。後にその死を知り、嘆き悲しんだ高貴な女性たちも少なくなかった。
フォルカー、ハーゲン、オルトヴィーンも、激しく剣を振るった。兜は割れ、傷口から流れた血があたりを染めた。ダンクヴァルトもまた、驚くべき働きを見せた。
デンマークの勇士たちも、勇敢に戦った。武器が盾へぶつかるたび、戦場には激しい音が鳴り響いた。ザクセンの兵たちも鋭い剣を振るい、ブルグント軍に大きな損害を与えた。
だが、ブルグントの勇士たちはひるまず、敵軍のただ中へ押し進んでいった。彼らの剣によって大きな傷を負う者が続出し、馬の鞍の上を血が流れ落ちた。騎士たちは、名誉を得るために命を懸けて戦った。
ネーデルラントの勇士たちは、激戦のただ中へ進むジークフリートの後を追った。ライン川から来た者たちの中にも、彼の速さについていける者はほとんどいなかった。
ジークフリートの剣が振るわれるたび、敵の兜から血が流れ落ちた。彼は敵軍を三度も端から端まで駆け抜け、ついにリウデガーのいる場所へたどり着いた。
そこへハーゲンも追いつき、ジークフリートとともに敵を打ち倒した。二人の前で、多くの優れた騎士が命を落とした。
リウデガーは、ジークフリートが名剣バルムンクを高く掲げ、味方の兵を次々と斬り倒しているのを見た。怒りに燃えた彼は、ジークフリートに立ち向かった。
両軍の勇士たちが二人の周囲へ押し寄せ、戦場には剣のぶつかり合う音が響き渡った。戦いはいっそう激しくなり、軍勢の隊列は崩れ始め、憎しみが大きく燃え上がった。
リウデガーは、兄リウデガストが捕らえられたことをすでに知らされていた。初めはゲルノートの仕業だと思っていたが、後になって、兄を捕らえたのがジークフリートであると知った。
リウデガーの剣から、すさまじい一撃が繰り出された。その衝撃に、ジークフリートの馬は鞍の下でよろめいた。しかし馬が立ち直ると、ジークフリートは恐ろしい勢いで再び戦い始めた。
ハーゲン、ゲルノート、ダンクヴァルト、フォルカー、ジンドルト、フーノルト、オルトヴィーンも彼を助けた。彼らの剣によって、多くの者が地に倒れた。
激戦の中でも、気高い君主たちはお互い離れずに戦い続けていた。投げ槍が兜の上を飛び交い、盾を貫いた。美しく飾られていた多くの盾が、たちまち血に染まった
馬を下り、徒歩で戦う者も多かった。ジークフリートとリウデガーも、互いへ激しく迫った。二人の周囲では槍や鋭い投げ槍が飛び交い、盾の金具が砕け散った。
ジークフリートは、ザクセン軍を打ち破ろうと、なおも剣を振るった。ダンクヴァルトもまた、敵の鎧を数多く切り裂いた。
そのときリウデガーは、相手の盾に描かれた王冠の印を目にした。それを見て初めて、自分が戦っている相手が誰なのかを悟った。
「戦いをやめよ!」
リウデガーは、配下の者たちへ大声で呼びかけた。
「私の前にいるのは、ジークムントの息子、あの強大なジークフリートだ。悪魔がこの男をザクセンへ送り込んだに違いない」
彼は軍旗を下ろさせ、休戦を求めた。ブルグント側はその申し出を受け入れたが、リウデガー自身はジークフリートの力によって捕虜となり、グンターの国へ連れていかれることになった。
両軍の話し合いによって、ようやく戦いは終わった。勇士たちは武器を下ろした。穴の開いた兜や切り裂かれた盾は、ブルグントの勇士たちが浴びせた傷によって赤く染まっていた。
勝利したブルグント軍は、望む者を捕虜にできる立場にあった。ゲルノートとハーゲンは、傷ついた者たちを運ぶよう命じた。そして五百人の勇士を捕虜として、ライン川の国へ連れ帰ることにした。
敗れたデンマークの兵たちは、自国へ帰っていった。ザクセンの者たちも、称賛を得られるほどの戦いはできず、そのことを嘆いた。戦死した者たちのことを、残された友人たちは深く悼んだ。
ブルグント軍は、戦場に残された武具をまとめ、ライン川の国へ運ぶ支度をした。誰もが、ジークフリートの働きを認めずにはいられなかった。この勝利は、何よりも彼の力によって得られたものだった。
ゲルノートは、一足先に使者をヴォルムスへ送った。彼と勇士たちが勝利を収め、立派に務めを果たしたことを、故郷の人々へ知らせるためである。
使者たちは急いで帰国し、吉報を伝えた。それまで不安に沈んでいた人々は、喜びに包まれた。宮廷の女性たちは、戦いに出た者たちがどうなったのか、使者に次々と尋ねた。
やがて使者の一人が、密かにクリームヒルトのもとへ呼ばれた。彼女が人前で尋ねることを避けたのは、戦場へ向かった勇士たちの中に、ひそかに心を寄せるジークフリートがいたからである。
使者が部屋へ入ってくると、美しいクリームヒルトは優しく声をかけた。
「どうか、喜ばしい知らせを聞かせてください。偽りなく話してくれたなら、褒美に金を与え、これからもあなたのことを忘れません。
兄のゲルノートは、無事に戦いを終えたのでしょうか。ほかの親しい者たちはどうなりましたか。多くの者が命を落としたのでしょうか。そして、誰が最も優れた働きをしたのか、教えてください」
使者はすぐに答えた。
「我らの中に、臆病な者は一人もおりませんでした。しかし誰よりも立派に戦ったのは、ネーデルラントから来た高貴な客人、ジークフリート様です。その腕が、戦場で成し遂げたことは驚くべきものでした。
ダンクヴァルトやハーゲンをはじめ、王に仕える勇士たちも、名誉を求めて勇敢に戦いました。しかし、彼らすべての働きでさえ、ジークフリート様一人の働きに比べれば、風のようにかすんでしまうほどです。
多くの敵が、ジークフリート様の剣によって倒れました。彼が馬を駆って戦場へ入るたび、夫や親族を失って悲しむ女たちが増えていったのです。
その剣が兜を打つ音は、遠くまで響き渡りました。傷口からは血が流れ、あの方が勇気にも徳にも優れた騎士であることを、誰もが認めました。
メッツのオルトヴィーンも、立派な働きをしました。その剣が届くところにいた敵は、傷を負うか、命を落とすかのどちらかでした。
あなたの兄ゲルノート様も、戦場ではこれ以上ないほど激しく敵を苦しめました。誇り高きブルグントの勇士たちは、恥を受けることなく、その名誉を守り抜いたのです。
彼らの剣によって、騎手を失った馬が数多く走り回りました。ライン川から来た勇士たちは、敵が二度と戦いたくないと思うほど勇敢に戦いました。
ハーゲンをはじめ、トローネゲの勇士たちも、両軍が激突したとき、多くの敵を倒しました。ジンドルト、フーノルト、ルーモルトも大きな働きをしました。リウデガーは、ライン川のあなた方へ戦いを挑んだことを、これから長く後悔するでしょう。
しかし、戦いの初めから終わりまで、誰よりも激しく戦ったのはジークフリート様でした。あの方は身分の高い捕虜たちを、グンター王の国へ連れて帰ってこられます。
リウデガスト王と、その兄リウデガー王を捕らえたのは、どちらもジークフリート様です。これほど多くの捕虜が、一人の勇士の働きによってこの国へ連れてこられたことは、かつてありませんでした」
それを聞くクリームヒルトにとって、これ以上喜ばしい知らせはなかった。使者はさらに続けた。
「無傷の捕虜だけでも、五百人を超えます。そのほか、重傷を負った者たちが、およそ八十台の血に染まった担架に乗せられて運ばれてきます。その多くは、ジークフリート様の剣によって傷を負った者たちです。
傲慢にもライン川の国へ戦いを挑んだ者たちは、今やグンター王の捕虜です。まもなく、勝利した軍勢とともにこの国へ到着します」
ジークフリートが無事に危機を切り抜けたと知ると、クリームヒルトの美しい顔は、喜びによって薔薇のように赤く染まった。親族や家臣たちが無事に戻ることも、彼女にとって大きな喜びだった。
「よく知らせてくれました。褒美として、立派な衣を与えましょう。それに、十マルクの黄金も受け取りなさい」
このような喜ばしい知らせを高貴な女性へ届けることができれば、使者が豊かな褒美を得るのも当然だった。約束どおり、使者には黄金と立派な衣が与えられた。
やがて多くの美しい娘たちが窓辺に集まり、通りを眺めた。遠くから、ブルグントの勇士たちが誇らしげに馬を進めてくるのが見えた。
傷を負わず帰った者も、担架で運ばれてきた者も、家族や友人たちの出迎えを受けた。グンターは、帰還する勇士たちを迎えるため、自ら喜んで馬を走らせた。彼を苦しめていた大きな不安は、こうして喜びのうちに終わった。
グンターは味方の勇士たちだけでなく、捕虜たちも丁重に迎えた。勝利をもたらしてくれた者たち一人ひとりに、心からの感謝を伝えた。
そして、遠征で何人の味方が命を落としたのかを尋ねた。
戦死したブルグントの勇士は、六十人だった。人々は、英雄たちが倒れたときにするように、彼らの死を深く嘆いた。
生きて帰った者たちも、傷だらけの盾や、切り裂かれた兜を持ち帰った。勇士たちが王の館の前で馬を下りると、あたりには喜びの声が満ちた。
グンターは彼らを町の中に宿泊させ、客人たちを不自由なく過ごさせるよう命じた。傷ついた者たちには、十分な休息と手厚い治療を与えた。敵である捕虜に対しても変わらぬ配慮を見せたところに、王の徳が表れていた。
グンターは、リウデガストに言った。
「よく来られた。そなたたちのために、私は大きな損害を受けた。だが、運が私を見放さぬかぎり、その償いを受けることになるだろう。私を助けてくれた友人たちに、神の恵みがあるよう願っている」
リウデガーが答えた。
「あなたは、その友人たちに心から感謝すべきでしょう。これほど身分の高い捕虜を得た王は、かつておりません。我らを丁重に扱ってくださるなら、そのお礼に多くの財宝を差し上げましょう」
「そなたたち二人を、やがて自由の身にしよう。だが今は、ここにとどまってもらいたい。私の許しなくこの国を去らぬよう、保証してもらおう」
リウデガーは、その条件を受け入れる証しとしてグンターに手を差し出した。
二人の王には休息の場が与えられ、傷ついた者たちにも柔らかな寝床が用意された。無傷の者たちには、蜂蜜酒と上等な葡萄酒が振る舞われた。帰還した軍勢が、これほど喜びに満ちたことはなかった。
壊れた盾は保管場所へ運ばれた。血に染まった鞍も数多くあったが、女性たちが目にして嘆かぬよう、人目につかないところへ片づけられた。
遠征から帰った多くの騎士たちは、疲れ果てていた。グンターは身分や敵味方を問わず、すべての客人を手厚くもてなし、とりわけ重傷を負った者たちを丁寧に看護させた。戦いを挑んだ者たちの傲慢な心も、もはやすっかり失われていた。
治療の技を持つ者たちには、豊かな報酬が約束された。負傷した勇士たちの命を救うため、量りきれぬほどの銀と、輝く黄金が差し出された。さらにグンターは、客人たちにも多くの贈り物を与えた。
故郷へ帰ろうとする者たちもいたが、グンターは友人を引き留めるように、もうしばらく滞在してほしいと頼んだ。そして、自分のために名誉ある働きをした勇士たちへ、どのように報いるべきかを重臣たちと相談した。
ゲルノートは提案した。
「今はいったん、故郷へ帰らせましょう。そして六週間後、祝宴を開くときに再び来るよう知らせるのです。その頃には、重い傷を負った者たちの多くも回復しているでしょう」
ジークフリートも、ネーデルラントへ帰る暇を願い出た。
しかしグンターは、彼が帰りたがっていると知ると、親しみを込めてもうしばらく残るよう頼んだ。ジークフリートがその願いを受け入れたのは、ただ美しいクリームヒルトに会いたい一心からだった。それがなければ、彼は故郷へ帰っていただろう。
ジークフリートは、褒美を受け取る必要などないほど豊かな身分であった。それでも、彼は十分な褒美に値する働きをしていた。グンターだけでなく、王の親族たちも、戦場で彼がどれほどの力を示したかを目にしており、心から彼に敬意を抱いていた。
美しいクリームヒルトに会えるかもしれないという望みから、ジークフリートはヴォルムスにとどまった。その願いは、やがてかなえられることになる。彼は望んでいたとおり彼女と知り合い、後に喜びに満ちて、父ジークムントの国へ帰ることになるのである。
祝宴までの間、グンターはたびたび騎士たちの競技を催した。若い勇士たちは喜んで腕を競い合った。王はまた、ブルグントの国へ集まる大勢の客人のために、ヴォルムスの町の外、ライン川の岸辺に客席を設けさせた。
祝宴の日が近づくと、美しいクリームヒルトも、親しい者たちを迎えるために王が盛大な宴を開こうとしていることを知った。宮廷の女性たちは、そこで身につける衣装や髪飾りを整えるため、忙しく働き始めた。
王妃ウーテも、誇り高き勇士たちが各地から集まってくると聞いた。保管されていた豪華な衣が、次々と取り出された。
ウーテは、愛する子供たちのため、多くの衣装を整えさせた。それによって、数多くの女性や娘たち、ブルグントの若い勇士たちが華やかに装うことになる。さらに彼女は、遠方から訪れる客人たちのためにも、立派な衣装を用意させた。
※本連載は、Karl Bartsch校訂『Das Nibelungenlied』の電子テキストを底本としています。原文はBibliotheca Augustanaで閲覧できます。
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